緊急特集 JOURNAL JAPON 201号(2006年9・10月号)

外国人の滞在・労働管理法が大幅改定になりました
= 日本企業からフランス子会社へ派遣される場合はSALARIE EN MISSION (新設の3年カード)、その妻には労働許可付きカードが発給されるなど、在仏日本人の滞在・労働事情を一変させる新法を詳解 =

1. サルコジー新法を在仏日本人の観点から見ると

A. サルコジー法(正確にはLOI n゜2006-9-11 du 24 juillet 2006 relative a l’immigration et a l’integration)の概要は、私たち在仏日本人の観点から見ますと以下のようです。

(1) 新規の滞在許可/滞在身分の設置。
(2) 慣習的にあるいは多義的(窓口によって対応が異なる)に発給されていた滞在身分の法的明確化と発給条件の設定・改定。
(3) 既存の滞在許可/滞在身分の発給条件の部分改定

そこで、今回の改定も踏まえつつ、まずは整理作業から始めてみましょう。

2.滞在許可の種類

(1) carte de resident(10年もの)
10年以下も10年以上もない10年限定の滞在許可。
労働許可・営業(商・工・手工業・自由職業)許可なども含んでいるオールマイティー・カード。
更新可能。
(2) carte de sejour temporaire(1年もの。正確には最長で1年)
最も一般的な滞在許可。最長で1年とされています。6か月、8か月などもあり得ます。
パスポートの有効残存期間が8か月しかない場合は滞在許可期間も8か月とされます。
更新は可能。
なお今回の改定で下記(3)の「3年もの」(新設)、(4)の「変則もの」が例外として規定されています。
(3) carte de sejour temporaire(の3年もの)(新設)
「SALARIE EN MISSION」(フランス国外(例:日本)から在仏の同一企業もしくは同一グループ企業に派遣される外国人(日本人))。
carte de sejour temporaire(最長で1年)の例外として新設置。更新可能。
(4) carte de sejour temporaire(の変則もの。1年以上〜4年上限)
新設ではないものの、発給対象を規定した点で、新設ともいえます。
MASTER以上のETUDIANT(学生)、SCIENTIFIQUE(研究者、研究指導者)が対象で、その学習プログラム、研究・研究指導プログラムの遂行に必要な期間によって、滞在許可期間(1年以上〜4年上限)が考慮される、としています。
(5) COMPETENCES ET TALENTS(3年もの、新設)
新規に設置された滞在許可/滞在身分。更新可能。

3.新設された滞在身分

A.今回の改定で、新たに登場した滞在身分は2種、いずれも3年もので、更新可能とされています。
(1) SALARIE EN MISSION
(2) COMPETENCES ET TALENTS

その内容は後章で詳述します。

4.慣習的あるいは多義的解釈で発給されていたもので、
今回、法的に明確化された滞在身分

(1) VISITEUR
(2) SALARIE(給与労働)/TRAVAILLEUR  TEMPORAIRE(短期給与労働)
(3) TRAVAILLEUR SAISONNIER(季節労働)
(4) STAGIAIRE(研修労働)
(5) 当人のACTIVITEの記載 (PEINTRE/画家、PROFESSEUR DE PIANO(ピアノ教師)など、いわゆるPROFESSION LIBERALE(自由職業労働)に属するACTIVITEの場合)
これら5つの滞在身分のうち、外国人滞在労働管理法典(*)に規定があったのは、VISITEURのみでした。
SALARIE/TRAVAILLEUR TEMPORAIREという規定も同法典にはなく、どちらを採用するかは発給当局(県庁/PREFECTURE)の裁量になっていました。
また、VISITEURというカテゴリーに、PROFESSION LIBERALE(自由職業労働)を含む/含まないの解釈の不統一も発給当局に生じていました。
今回の改定で、SALARIE/TRAVAILLEUR  TEMPORAIREの定義、VISITEURとPROFESSION LIBERALEの分離をしています。

発給条件などについては、後章に譲ります。
*Code de l’entre・et du sejour des etrangers et du droit d’asile。
旧来の0rdonnance n゜45-2658 du 2-11-1945を法典化。

5. 既存の滞在許可/滞在身分の発給条件の部分改定.

ここまでの章に登場しなかった滞在許可/滞在身分としては、

(1) CARTE DE RESIDENT(通称10年カード)
(2) COMMER・ANT(ARTISANT/INDUSTRIEL)(商工・手工業者)
(3) ETUDIANT(学生)
(4) SCIENTIFIQUE(研究者/研究指導者)
(5) VIE PRIVEE ET FAMILIALE(個人的/家族的事情による滞在者)
(6) PROFESSION ARTISTIQUE ET CULTURELLE(パリの滞在許可窓口でARTISTE SOUS CONTRATと呼称)(文化・芸術活動従事者)の6つがありますが、PROFESSION ARTISTIQUE ET CULTURELLEのみ改定あるいは追加・補足がありません。他については、何らかの改定あるいは追加・補足規定が出されています。

以上で概要は終えて、個々を見ていきましょう。

6.SALARIE EN MISSION(新設、3年もの)とは

まず、法文を掲げます。

要約
L.313.10条 以下の場合には、carte de sejour temporaire(職業活動に従事する許可付きの)が発給される。

1〜4のケースは省略。
5以下の条件に該当する外国人(日本人)
・ フランス国外の企業から、
在仏の同一企業あるいは同一企業グープに派遣される外国人(日本人)で、
・ 少なくとも月額SMIC(法定最低賃金、現行はBRUT1254、31ユーロ)の1.5倍の月額給与(約1890ユーロ)が支払われる場合。
この場合は、SALARIE EN MISSIONと記載されたカードが発給される。
このカードは、3年間有効。またその3年間、自由にフランスに入国でき、その企業あるいはその企業グループで派遣業務に当ることができる。
・ また、在仏の同一企業、同一企業グープと労働契約を結んだ外国人(日本人)で、上記・を満たす場合も、同じカードが発給される。
・ なお、在仏の同一企業、同一企業グープとは、労働法L342- 1- ・- 2゜の規定を指す。

以上のような条文です。

参考までに労働法L342- 1- ・- 2゜を訳出しますと、
・ 労働法L342- 1- ・- 2゜
フランス国外の企業は、その社員をフランスに派遣することができる。この場合、同企業と同社員の間に労働契約(派遣契約)があり、派遣期間中、両者の関係が保たれることが条件となる。なお、派遣業務は、在仏の同一 企業あるいは同一企業グープで行われる。

Q.この新設カードの意味、意義はどのようなものですか?

A. 従来の派遣型SALARIE とSALARIE DETACHEを一本化したということでしょう。
従来の派遣型SALARIE にあっては、月額給与がMINIMUM GARANTIE(MG)という公定数字の1300倍、という内規でした。
現行のMGは3.17ユーロですから、3.17×1300=4121ユーロの月額給与数字が必要とされていました。今回の改定でSMICの1.5倍=約 1890ユーロとなり、大幅にハードルを低くしたわけです。
また、従来は「1年ものカード」で、1年ごとの更新が必要でしたが、「3年ものカード」に格上げしたわけです。
一方、従来のSALARIE DETACHEは、外国人滞在労働管理法典に規定はなく、CIRCULAIRE(通達)レベルで規定されていました。SALARIE DETACHEとは、フランス国外の企業、例えば在日の日本企業A社のB社員が、同A社と提携関係にある在フランスのC社に派遣されることをいいます。
DETACHEは「引き離された」という意味ですから、B社員の籍は日本企業A社にあり、A社から「引き離されて」、フランスのB社に一時的に出向する、ということです。より具体的にはB社員の給与は日本企業A社の負担です。また、従来のSALARIE DETACHEでは、その出向許可期間は最長で18か月、特例で24か月と規定されていました。

今回の改定では、
・ 従来のSALARIE DETACHE(在日企業側の給与負担)
・ 従来の派遣型SALARIE(在仏企業側の給与負担)

の双方をSALARIE EN MISSION(3年カード、更新可能)としたわけです。
そして、これは後段でも触れますが、

・ SALARIE EN MISSIONの配偶者(通常は妻)には、労働許可を含んだVIE PRIVEE ET FAMILIALEが発給されます。従来は、配偶者にはVISITEURが発給され、労働許可は排除されていました。今回の改定で、その妻にも労働許可が与えられることになりました。

7.COMPETENCES ET TALENTS(新設、3年もの)とは

A. 全9条にわたって定義されていますが、在仏日本人に関係する条項のみ意訳しておきます。

L.315-1条
当カードは、
・ フランスと申請者の母国(日本)の経済発展に著しくかつ継続的に貢献できる外国人(日本人)、
・ 同じく、知的、人文・自然科学的、文化的、人道的、スポーツ分野などで貢献できる外国人(日本人)、を対象に発給され、
・ 有効期間は3年で、更新は可能。

L.315-2条
アフリカ圏の外国人を念頭においた規定なので省略

L.315-3条
・ 当カードの発給は、申請者のプロジェクトの性質・内容、フランスと申請者の母国(日本)への貢献度などの観点から判定される。
・ 当カードの申請は、フランスに既滞在(何らかの滞在身分で滞在許可を所持して)している外国人は居住地の県庁/PRE-FECTUREになされる。
・ フランス国外(日本)にいる外国人は、在同国(日本)のフランス総領事館になされる
・ 当カードの発給権限は、内務大臣に属する。

L.315-4条
プロジェクトの性質・内容、フランスと申請者の母国(日本)への貢献度などについては、毎年、担当委員会が判定基準を設置する。

L.315-5条
当カードは、当人のプロジェクトを実現するためにその就業を認める。

L.315-6条
アフリカ圏の外国人を念頭においた規定なので省略

L.315-7条
当カード所持者の配偶者(18才以上)、子ども(18才)には、労働許可を含んだカードVIE PRIVEE ET FAMILIALEカードが発給される。当カード所持者がフランス滞在し当カードを維持している限り、配偶者、子どものVIE PRIVEE ET FAMILIALEも更新され得る。

L.315-8条
刑法上の犯罪を犯した場合の没収規定。訳出略。

L.315-9条
当カード発給の詳細は、別途、国務院(CONSEIL D’ETA)の政令(DECRET)で定めるものとする。

Q.この新設カードの狙いはなんでしょう?

A. サルコジー内務大臣が提唱している「外国人の選別」です。フランス側に必要な人材は確保する、ということです。同内務大臣が旧フランス植民地国のアフリカ某国を訪問した際、同某国の政府首脳陣が「我が国の将来を背負う有能な人材の殆どがフランスへ留学している。
この「COMPETENCES ET TALENTS」案は、それら有能な人材をフランスに押しとどめ、我が国の頭脳を空洞化するものだ」と苦情を呈した経緯があります。
訳出を省略しましたが、そのあたりを意識し配慮した条項もあります。

(以下、次号)
文責 岡本 宏嗣 当会滞在相談室担当